〜ダイスケの部屋〜


 「出る杭は貴重だ」 

 




谷大先生が飲み屋で食いつくネタは、大概予想がつく。極めてマイナな、
通常個人で(場合によっては団体でも)やらない様なことが多い。
例えば、返し突き1,000本を1,000日続ける、個人で大砲を持っている、
一流派立てたと言って良いくらい手裏剣を研究する、などなど。
むしろ、自分のやっている武術に関連しない話の方が、食いつきが
良いように観測される。

どんなに話に食いついていたとしても、基本的に自分でやろうとはしない。
ただ単に面白がっているだけのようにも見受けられるが、もしかしたら
そうでないのではないか、と思わなくもない。


同好の士、類は友を呼ぶ、などと言うが、のめり込み具合の深さに
大きな差がある事が多い。また、微妙に好みの差もあり、個々に
コロニィ(個体群)を形成している。

趣味であるから、嫌なことはそれほど我慢しなくて良いはずだし、
楽しいことだけを追い求めれば良い。嫌なら止めてしまうなり、別の
コロニィに移動しても良い。お手軽、お気軽である。

とは言っても、他人とコミュニケーションをすれば、(良い意味でも
悪い意味でも)摩擦は生じるし、人が多くなれば(個体群が群衆となれば
特に)調整、ちょっとした妥協、我慢などが必要となる場合が多い。意識
せずとも、しがらみ、上下関係などが出来てしまう。


ある人が何の気無しに言った、しかも少数派の意見で右往左往する事が
よくある。怒られるのを承知で言えば、自分の発言力、与える影響などを
客観視出来ていない故の問題であることが多い。また、突発的な発言や
我儘などに耐えるのも下の者の務めである、という美徳(?)も存在する。

こういった、ある意味社会の縮図的な物に嫌々耐えている人達ばかり
かと言うと、実はそうでもない。一部にはやはり、独自の道を突き進む
人がいる。他人に迷惑をかけない範囲であれば、多少奇異に思われても
放置されるし、そう言った人を排除しない、団体としてのキャパがある
所に、人が集まって来たりもする。居心地が良い、と言う奴である。
どうにもダメになったら、コロニィを離脱するだけだ。


どんなに口では嫌だと言っていても、嫌なことから離れることを選択
していない場合、何か(面倒だとか、先が見えないとか。。)と秤にかけて、
より良いと思われる方を選択しているに過ぎない。しがらみだとか
言い訳をいくら言ったところで、嫌な方を自ら選択しているのだ。
好んで嫌な状態のままでいると言って良い。そこには必ず、利害関係が
存在する。コロニィ自体を好んでいたりする訳だ。

その点、独自の道を進んでいる人に妥協はない。他者との関係において、
嫌な物もあまりない。本当に嫌な物があれば、排除するだろう。
その人が生み出す思考、物などは、他の人からどんなに突飛に見えたと
しても、その人にとってすばらしい。他者の評価など、なぜ気にする必要が
あろうか、と言う清々しいスタンスである。
こういった物は、続けばそれなり以上に価値があり、認める人も出てくる。


おそらく、谷大先生は浮世離れしたものにあこがれを抱いており、それを
実際に実行している人に感銘を抱いているのだ。そこには、世間に
揉まれてもなお残っていた、貴重な心が残っていると言って良い。
自分は真似できなくとも、仲間内にそれを実行している人がいるだけでも
感激である。世間擦れしないで進んでいって欲しい。







 
                                
                                      


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