身 辺 雑 事

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 居酒屋のメニュー

  
 
  毎週のごとく、稽古の後には飲み会となります。場所は赤坂、六本木、本邦有数の歓楽街で有ることは自他共に認めるでしょう。
 高級店は雲霞のごとく溢れていますが、我々、一貫堂の会員はそのような店には見向きもしません。まったく経済的な理由からなのですが。
 高級店の合間を縫いって、安い居酒屋を探し、祝杯をあげております。どう考えても高級歓楽街には相応しくない風体で、うろうろします。
 稽古の疲れを顕わにした、大きなバッグ、リュックの集団がとぼとぼ歩いているのです。I先生などは、背中に本身の刀を担いでいます。

 つい先日も、某居酒屋に行きました。東京ではよく見受けられる店で、店名を書いても良いんですが、取りあえず止しておきます。テーブル席に座ると、まず乾杯、稽古後の一杯のビール…まあ、これの巧いこと! 人生の価値、幸せは、これなのだ! と心底思います。
 値段が安いので有名な居酒屋で、よく利用する処です。その日私は、沢山あるメニューをすべてチェックしてみました。注文は、何時もマッキーまかせで、私はひたすら飲みかつ食べる役目だったのでが、この日は何となく新たな出会いの予感がしたのです。

 あった、有りました! 私の予感が当たりました。メニューの隅の方に書かれているではありませんか、「お子様ランチ」と。
「お子様ランチ!」私は、少し離れていた店員に向かって、大声で注文しました。店員は驚いたように、口を半開きにして、えっ! と言う顔をします。
 店員だけでは有りません。周りの席の人はむろん、我々の仲間も怪訝そうに私を見るではありませんか。人の心を傷つける冷たい目つきです。
 若い頃なら完全に萎縮するか、笑いと共に冗談で逃げるところですが、私もいい年をした大人です。人生を開き直った人間です。メニューを指さしながら、真剣な顔で再度注文しました。「お子様ランチ!」

 夜の居酒屋で、ランチはおかしいだろう。おじさんが、お子様かよ。矛盾は有るでしょうが良いんです、まさに私の人生そのものじゃないですか。
値段は380円、鶏の唐揚げ、エビフライ、卵焼き、フライドポテト、魚肉ソーセージ、そしておにぎり。残念ながら、旗とヤクルトは有りませんでしたが、お子様ランチとしては合格でしょう。生まれて初めて、お子様ランチを食べました。

 はっきり申しまして、すべてが冷凍食品を、レンジでチンしたものでありますが、満足でした。私に好き嫌いは有りません。しかし、値段相応の料理が出ないと腹が立ちます。
 高級店で、クリスタルガラスの容器に、アイスピックで割った氷を敷き詰め、その上に刺身を乗せて出す店など、最低です。刺身は魚が命だろうが! こんな店で、値段と料理が釣り合った試しがありません。
 創作料理などと銘打った店が多くあります。これも全くいけません。勝手に創作なんかするな! と言いたくなります。

 冷凍食品は良いですよ。スーパーの総菜、ファミレスのセントラルキッチン製など足下にも及びません。試しに冷凍食品を買い込み、食べて見て下さい。私の意見に納得されると思います。
 具体的に言いましょう。味の素の冷凍餃子を超える店が、どの程度有るでしょう。餃子を店で提供する皆さん、負けないで下さい。

 最後に、鯛焼きが有ったので二つ注文しました。一個、105円です。マッキーも「美味しい、美味しい」と言って食べました。むろん冷凍食品で有ったことは言うまでもありません。

 本来、ここまでで終わりの筈でした。しかし、たまたま機会があってまたもや居酒屋に行きました。(機会が無くても行くんですが)
 その店で分厚いメニューをチェックしました。今回の件があったからなおさらです。すると、なんと有るではありませんか! さすがに「お子様ランチ」ではなく「お子様フード」となっておりました。
 なるほど気づきませんでしたが、お子様ランチもどきは、けっこう居酒屋のメニューにあるんですね。と言うことは、家族連れのお客さんも多いのでしょう。私は出会ったことはありませんが。





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