誕生日(その1)
6月29日は私の誕生日である。
ところが、同じ日に塩川先生と岩目地先生が演武のため、そろって上京されるという連絡が入った。さらに翌日の30日には、もう帰郷されるというのだ。
間髪を入れず、愚妻の顔が浮かんだ。誕生日、母の日、父の日、命日、お盆、そういったたぐいの記念日を極めて大切に考える人である。
ヒロコに相談した。
「それは、誕生日よ!」「家庭は大切にしなくっちゃ」
ヒロコの言うことには絶対逆らえない私である。結論はおのずから出た。
ところが、ところがである。6月22日朝、仕事に出かける前、愚妻は言った。
「今度の土曜日のことだけど・・・・」
「ああ、誕生日のことか」何となく返答をしたところ、彼女は突然笑い出した。
こともあろうか、彼女はその日、職場の同僚との飲み会があるというのだ。
「いまさら断ることも出来ないし・・・・」
「じゃあ俺も先生達と食事をするから」
言下に彼女は言った。
「こども達だけの食事はだめ! ましてや両親とも子供をおいて飲みに行くなどとんでもない!」
子供といっても、19才と15才の豚児である
「別にいいよ、じゃあ俺が家にいる」
その日の晩の話である。
「こども達と相談したんだけど、あす誕生会をしようと思うけど?」
「いいよ別に」(ほんとにどうでも良いのである)
「だけど、私の誕生日は絶対忘れてはだめ! こういう記念日は忘れない自信があったんだけど・・・・・・」
「そうよ、だいたい父の日と間がないのが問題よ!」
(父の日を決めた人が悪いのか、あるいは俺の両親が悪いというのか?)
「こういうことを、きちんとしていると。将来こども達が命日にはきちんと線香をあげてくれるのよ!」私にとってはさらにどうでも良いことだ。
「お父さんは、親に誕生日とか、きちんとしてもらわなかったのでは?」(おいおい、親まで引っ張りだすのか)
「俺の母親もそういうのは、割にこだわる方だったなあ・・・・・。お前、俺の人間性の問題だと思はないか?」
「うん・・・・・・・」
愚妻は私と25年つきあっていまだに良く解っていないようである。
長男の豚児の方がはるかに理解しているように思う。
誕生日はどうでもいいが、いったいぜんたい、私は29日、塩川先生、岩目地先生と飲みに行って良いのだろうか?
ヒロコさんに相談してみよう!
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