身 辺 雑 事

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 怪我をするのはいやだ



 

 ヒトシがまたもや事件を引き起こした。
 ある日、彼が行きつけのバーに飲みにいったところ、何時もいるはずのオ−ナ−が休みだった。どうかしたのかバーテンダーに尋ねたところ、実はオ−ナ−は、いい年をして空手をやっており(極真会館)、組み手をやっていた。その際、中段回し蹴りを受けた時、腕を骨折してしまい シェイカ−を振れないための休みだという。
その話を聴いたヒトシは「実は自分も空手をやっている。オ−ナ−に会ったら、塩川寶祥という空手の先生を知っているか聞くてくれ」と頼んだ。

 後日、その店を再び訪れた際、バ−テンダ−から話しかけてきた。
「オ−ナ−に聞きましたよ、『塩川先生のことは知っている、どういう関係があるのか聞いてくれ』と言われましたよ」
 ヒトシは嬉しくなって、よせばいいのに、塩川先生の武勇伝を滔々と喋りまくった。さらに追い打ちをかけるように、「塩川先生の最後の直弟子が東京におり、自分が指導を受けている」と答えてしまった。
 「その先生の最後の直弟子とは凄い、その人も凄まじい人でしょうね?」

 ヒトシを叱った。全くいい加減にして欲しい、私自身、法律を全く知らないわけではなく、指導員補佐は弁護士である。道場破り来た場合は撃退するのは簡単。国家権力を背景に、不法侵入、威力妨害にて起訴に持ち込み、公判を維持することも可能である。
しかし、心底一緒に稽古させて下さいと来た場合はどうして拒否できるのだ、対応の仕様がない。私は怪我をするのはいやだ。その時はおまえが相手をしろと申し渡した。
 まったく軽率な会員である。今後は「ヒトシのバカ」と呼ぶことにした。




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