杖 道




杖道紹介 短杖術
神道夢想流杖術の由来 神道流剣術の型
神道夢想流杖術の型 内田流短杖の型
神道夢想流杖術における型の意味(前) 神道夢想流杖術における型の意味(後)





 神道夢想流杖術における型の意味<2>

 


 

三、神道夢想流の歴史的変遷

@ 現代では考えられぬ逸話であるが、江戸時代にはこういうことがあったと伝えられている。

ある日弟子が、師匠に質問した。「先生、じつはこの型は、このようにも考えられるのではありませんか?」「ほう、お前も偉くなったものだな、明日から来なくて良い。自分でやりなさい」と、即く破門になった。
この、逸話は大きな意味があると思う。

A 神道夢想流が歴史的変革をとげたのは、明治になって、黒田藩の御留め流だったのが、公開されたことにある。
柔術から柔道への変革と期を一にするものであった。柔道における嘉納治五郎 師範の位置に、神道夢想流においては白石範次郎師範がいる。(余談ではあるが、空手道においては、糸洲安恒師範)
神道夢想流普及の第一の功労者は何と言っても清水隆次師範である。兄弟弟子の乙藤市蔵師範は普及より技の伝承への功績が大きい。
何れにせよ、技の伝承と普及は必ずしも一致しない。いやむしろ反することが多い。伝承のみを考えるなら、上記の江戸時代の破門騒動になってしまう。

B 神道夢想流を普及させる為には、社会情勢とあわせ、かつ稽古が面白くなくてはならぬことは当然である。体育、教育に貢献することが必要とされ、楽しく稽古できることが不可欠となる。此処に至り武術が武道になる。
この時点で、神道夢想流の理念は敢えて後方へ移さざるを得なくなった。なぜなら、型に理合を打ち出し興味を引き留める必要があったからである。(杖道の理合は実に面白く、これほど理合の多い武道もない)
意図的にその様にされた師範は、それで何ら問題はない。問題は、代を重ねるに従って理合により理念が崩壊することである。
理合を研究することは、楽しい事である。現代において、神道夢想流の魅力も此処にある。しかし理合いに走るあまり、「上達の為のカリキュラム」という本来持つべき型の意味が失われれば致命的である。
まさに、神道夢想流はそうなってしまいつつあるのではあるまいか?


四、今日における指導の混乱について

@ 型武道において、理合は命である。理合を修めることなくして技の修得は不可能とさえ言える。師範によって指導、理合が異なるのは有る程度一般的であり、良いところもあり、弊害はそれほどないかもしれない。
 しかし、神道夢想流にはこれが言えない。理念を忘れ、理合に走るならば流派自体が消滅してしまう。

A 神道夢想流において、理合はあくまで方便だとするなら、師範によって異なるのは当然であり、各師範ごとに種々の理合が成立する。
 新しく神道夢想流杖を始めた人は、まず理合から入る。これは、年輩者が武道を始めるにあたって、とても入りやすいと言えるだろう。空手のように、理屈よりまず身体で覚えろなどという、乱暴なことは言わない。
しかし、暫くすると当惑し、混乱してしまう。それぞれの指導者の言うことが異なるのだ。
理合から入り、理屈とともに稽古を続けていく傾向の甚だしい神道夢想流においてはこの弊害は甚だしい。

B 楽しく、理合をもとに、稽古を続けていくのはおおいに結構。
支点、力点、作用点など、力学的見地からの高校生の意見など、微笑ましくもあり大いに参考にもなる。色々理屈をひねくり回し、互いに意見を交換するのは楽しいものである。
 しかし、神道夢想流において、型の本質は「上達の為のカリキュラム」にあるのだ。理合はあくまで方便である。このことを肝に銘じて欲しい。

C 各師範、指導者の方々に御願いしたい。それぞれの師より教わったことを、忠実に伝えて欲しい。一画一点もおろそかにすることなく正確に。これが、神道夢想流の型の根幹である。
 そして、自分なりの理合は、あくまで参考意見として、教授されてはいかがであろうか。そうすれば教わる方も楽しく稽古できるのではあるまいか。
 尚、私は空想してしまう。明治期の普及という、変革を受けていない、白石範次郎直伝の型が、日本の何処かに隠れて、いまなお伝承されていることを。


(まとめ)
神道夢想流ほど、体系づけられ完成度の高い武道を私は知らない。
64本の型を、順を追って習うことにより、杖を使うことが出来るように組み上げられた「上達の為のカリキュラム」を持つ武道は、寡聞にして聞いたことがない。
しかし、この「カリキュラム」という理念を正確に把握しないと、混乱に陥り、神道 夢想流の伝承じたいが不可能になってしまう。
混乱すれば、最も被害をうけるのは初心者であることを、師範の方々は肝に銘じてほしい。
過去のある時点で、数人の師範家が共通理念のもとに集い、心血を注いで成立させた 素晴らしい文化遺産。この貴重な遺産を、次世代へ伝えることもまた、今日、神道夢想 流を稽古する私たちの使命とはいえまいか。

この素晴らしい武道に乾杯!!


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